〜社殿の龍・虎・猿・梟に込められた、神々と天下人の願いとは?〜
秩父神社の社殿を彩る精巧な彫刻の数々。特に有名な「四神」にちなんだ彫刻は、伝説的な名工「左甚五郎」の作と伝えられています。2019年から進められていた社殿の彫刻修復が完了し、400年前の鮮やかな色彩が蘇りました。これらの彫刻を巡ることで、天下統一を願った徳川家康の想いや、秩父の人々が大切にしてきた知恵に触れることができます。今が一番見頃の社殿を巡る「物語の旅」へ出かけましょう!
➡️ 秩父神社のすべてを知る(歴史・ご利益・祭り):【秩父神社ガイド決定版】2000年の歴史を巡る旅
1. 秩父神社の彫刻群と、天下人の願い
社殿再建と徳川家康の強い願い
秩父神社の社殿は、1592年に徳川家康の寄進によって再建されました。当時の家康は天下統一を目指すまさに転換期にあり、この社殿には「天下統一の戦勝祈願」や「徳川家の永遠の繁栄」という強い願いが込められていたと言われています。社殿の四方を守護する神獣「四神」にちなんだ彫刻は、この願いを象徴しているのかもしれません。
2023年!修復完了で色彩が鮮やかに蘇る
前回の塗り直しが約50年前だった社殿彫刻は、老朽化が進んでいました。しかし、御鎮座2100年事業の一環として修復が進められ、色褪せていた彫刻が江戸時代初期の鮮やかな岩絵の具の色彩で蘇りました。まるでタイムスリップしたかのような、躍動感あふれる姿は今こそ鑑賞する価値があります!
2.【必見】彫刻を巡る物語|社殿の四方を守る神々
社殿を**時計回り(東→南→西→北)**に巡ると、それぞれの彫刻に込められた物語を順番に楽しむことができます。これが最も正しい鑑賞ルートです。
東の守護神:つなぎの龍(青龍)
伝説的な名工、左甚五郎作と伝えられる傑作です。昔、近くの池に住み、洪水を起こして人々を困らせていた龍。左甚五郎がこの彫刻を制作し、龍の体を鎖で繋いだところ、水害が治まったという伝説が残ります。
- 見どころ: 鎖で繋がれながらも、今にも飛び出してきそうな力強い躍動感。生命力と、人々の暮らしを守ろうとする龍の心を映しています。
- 豆知識: この「つなぎの龍」は、現代の3Dプリンタ技術によって、フルカラーデータとして忠実に再現されたことでも話題になりました。
南の守護神:子育ての虎(白虎の代わり)
徳川家康公が寅年・寅の日・寅の刻に生まれたことにちなんで奉納された彫刻です。
- 見どころ: 母虎と子虎の姿は、「子孫繁栄」や「家庭円満」の象徴とされ、徳川家の永遠の繁栄への願いが込められています。
- 深掘り: よく見ると、母虎の体にはヒョウ柄が描かれています。これは、江戸時代初期にはヒョウは虎の子供だと信じられていたためだそうです。知識と信仰が交錯する、興味深い発見です。
西の守護神:お元気三猿(朱雀の代わり)
日光東照宮の「見ざる・言わざる・聞かざる」とは対照的。こちらは**「よく見て・よく聞いて・よく話す」**という、健康に生きるための教えが込められています。猿たちが楽しそうに語り合っているような表情は、私たちにも元気を与えてくれるでしょう。
- **教え:** 人生を前向きに、積極的に生きる姿勢を教えてくれる、秩父らしい明るい彫刻です。
北の守護神:北辰の梟(玄武の代わり)
この梟は、夜空の北極星を神格化した秩父神社の祭神「妙見様」と深く関わっています。体が本殿に向けながらも、頭を真北に向けているのは、**「知恵と導きの神」**として、参拝者に正しい道を示してくれることを意味しています。
- **深掘り:** 常に本質を見据え、知恵を持って導きを与えるという妙見様の神格を、梟という姿に託した、非常に示唆に富む彫刻です。
3. 【さらに深く楽しむ】見逃せないその他の彫刻
上記四神の彫刻以外にも、社殿には見どころが満載です。
- 恵比寿様と大黒様: 拝殿正面の左側に鎮座。富の願いを叶える「大黒様」と、健康の願いを叶える「恵比寿様」が向かい合っています。
- 長寿の文様「毘沙門亀甲」: 社殿の四本の柱に彫られている六角形の文様です。長寿・健康・魔除けの意味をもち、七福神の一柱である毘沙門天の甲冑にも用いられています。
- 絢爛な唐獅子と鳳凰: 小壁には、勇壮な唐獅子や優美な鳳凰などの瑞獣や、仙人といった彫刻が施されており、その絢爛さは目を奪われるほどです。
4. 彫刻から学ぶ、人生の転機を掴むヒント
秩父神社の彫刻は、単なる芸術作品ではありません。そこには、私たちがより良く生きるための、深い教えが隠されています。
- 「子育ての虎」から学ぶ「守り」の力: 家族や大切な人との絆を再確認させてくれます。新しいことを始める時も、まずは大切な人を守ることを第一に考えるという「守りの力」を教えてくれるでしょう。
- 「お元気三猿」から学ぶ「気づき」の力: 「よく見て、よく聞いて・よく話す」という教えを実践すれば、新たな出会いやチャンスに気づき、人生の転機を掴むことができるかもしれません。
- 「北辰の梟」から学ぶ「導き」の力: どんな暗闇の中でも、正しい方角を示す梟のように、私たちも自分自身の内なる声に耳を傾けることで、進むべき道が見えてくるはずです。
秩父の彫刻を巡ることは、自分自身を見つめ直し、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれる旅となるでしょう。
まとめ|旅が「物語」へと変わる瞬間
秩父神社の社殿は、単なる建築物ではありません。そこには、天下統一を願った徳川家康の想いと、人々の暮らしを守る神々の知恵、そして名工の魂が刻まれています。
四神の彫刻に込められた深い意味を知ることで、秩父神社での参拝は、一層心豊かな時間となるでしょう。
修復を終えて鮮やかに蘇った今こそ、最高の見頃です!ぜひ、この記事を片手に、社殿をゆっくりと巡り、その奥深い物語を感じ取ってみてください。



コメント